2026年10月24日(土)、都立桜ヶ丘公園(多摩市)で生きもの観察会を開催しました。当センターが東急財団の助成を受けて進める「ネイチャーポジティブ多摩丘陵プロジェクト」の一環です。講師は、自然観察指導員の篠原悟さんと、矢島そのみさんです。
当日はあいにくの小雨でしたが、雨の中でも多くの生きものを観察できました。
記録の速報
当日、参加者がiNaturalistに投稿した観察記録は、10月24日夜の時点で209件・92分類群(うち研究グレード127件)です。内訳は、植物99件、昆虫64件、クモ28件、菌類9件、鳥6件、貝2件などです。
手薄だったクモの記録が一日で28件
今回、特に大きな成果となったのがクモの記録です。篠原さんがクモに詳しいこともありますが、雨の日でもクモの巣は比較的観察しやすかったこともあるかもしれません。クモは、当センターにとってもこれまで調査が手薄だった分類群です。
この日は、クモだけで28件・12分類群(研究グレードは9種)が記録されました。雨で飛び回る虫が少なかった一方、網の上でじっとしているクモは、雨の日でも見つけやすく、じっくり撮影することができました。
- シロカネイソウロウグモ:ジョロウグモの大きな網に「居候」し、網にかかった小さな獲物をかすめ取って暮らす、銀色に光る数ミリのクモです。いることは知っていても見つけたことがない、という声があがるほど見つけにくく、参加者が拡大撮影に成功しました。桜ヶ丘公園のiNaturalistでは初めての記録です。
- オナガグモ:枯れ松葉のような細長い体で、ほかのクモを襲って食べるクモです。この日だけで7件記録され、これまでの記録(3件)を一日で上回りました。今まではクモと認識していなかったかも?
- アシナガグモ:脚と体の細長いクモ。これまでの記録が少なかった種類です。
- ジョロウグモ:最も見つけやすい数の多いクモですが、詳しい解説に皆で聞き入りました。大きなメスの網には小さなオスが2〜3匹いて、オスはメスに食べられないよう、脱皮直後や食事中などの機会をねらって交接するという解説がありました。網に音叉の振動を伝えると、獲物がかかったと勘違いしたジョロウクモが寄ってくる様子も観察しました。雨のせいか反応は鈍く、なかなか来ませんでしたが、最後はついにクモが食いついてくれました。
- クサグモ:葉の間では、卵のうを守ったまま力尽きたクサグモの親グモも見つかりました。
- このほか、オオヒメグモ、ネコハエトリ、コガタコガネグモなどが記録されました。




雨宿りの東屋で
雨脚が強まった時間は東屋で雨宿り。その間も、講師の解説は止まりませんでした。
- 虫の耳:コオロギやキリギリスの仲間は前脚、バッタの仲間はおなかの付け根に耳があります。
- バイオミミクリー:生きものの形を技術に生かす話。カエデ類の翼のある種子をまねた片翼のプロペラや、ハスの葉が水をはじくロータス効果を、東屋の雨だれで確かめました。
- どんぐり:帽子(殻斗)のしま模様やうろこ模様が見分けの手がかり。その年に熟すコナラと、翌年まで待つクヌギやマテバシイ。かたい殻に守られたスダジイは渋みが少ない、という話も。


そのほかの記録
雨の中でも、トネアザミなどの花にはトラマルハナバチが訪れていました。サルトリイバラの葉では個性的な形の幼虫が見つかり、モモイロツマキリコヤガの幼虫と同定されました(iNaturalist上では多摩丘陵初記録)。植物では、市内では見かけることが少ないコメナモミや、翼のある種子をもつオニドコロなども記録されました。





桜ヶ丘公園は多摩市内にあるため、これらの記録は多摩市生きもの調査隊のデータとしても活用されます。なお、同定が進むにつれて、記録の数や内容は変わっていきます。




おわりに
あいにくの雨模様でしたが、講師のお二人の案内のおかげで、楽しみながら自然観察ができました。また、当センターの記録で手薄だったクモを中心に、多くの記録を残すことができました。ネイチャーポジティブ多摩丘陵プロジェクトでは、今後も多摩丘陵の各地で記録を積み上げていきます。篠原さん、矢島さん、雨の中ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。(渡辺仁)
この観察会は、公益財団法人東急財団「多摩川の美しい未来づくり助成」を受けて実施する「ネイチャーポジティブ多摩丘陵プロジェクト」の一環です。


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